相談することの大切さ
会報「第32号 共に生きる」より(平成22年7月発行)
 Fさん(25歳・男性)は養護学校(現特別支援学校)高等部を卒業後、ワークセンター豊新に通所しています。する、しないなどのことばでの意思表示はできますが、言えないことも多く、そのことを家からたくさんの物を持ってくるなどのわかりにくい行動で表すことも多かったです。
 自己主張する力をつけていくために、職員がそれぞれの思いを聴くだけではなく、本人が発言・発信する力をつけ、グループの仲間同士でその思いを共有できる場を作ることを目的に、1年ほど前から“ミーティング”の時間を取り入れています。
 初めは、こちらがその日の彼の持っている物や連絡帳に書かれてある家での様子に対して質問しながら行なっていたのですが、今では何か言いたいことがある人はいますか?と訊くと、「ハイ!」と真っ先に手を挙げて意見を言うことが増えています。その内容は、「職員と○○したい」「週末に○○を買いに(食べに)お母さんと行きたい」が大半ですが、ミーティングではそれをかなえるためにどうすればいいのかを皆で一緒に考えています。
 その頃から彼と相談しながら書いていた連絡帳の内容が変化しました。以前は直接言いにくい事を「〜と書いて欲しい」と言うことが園では多かったのですが、最近は「このことは自分で言います。だから連絡帳には書かなくていいです。」と言うようになっています。
 また、先日、活動中に通った店に自ら入って行き、欲しいカタログをお店の人に自分で頼んで、もらいました。突然の行動に職員は驚きましたが、彼はいつも見ていたようで、後から訊くと「カタログがあるのを知っていた。欲しかった。」と話していました。
 彼との関わりを通して、こちらが先に結論を出すのではなく、彼自身が自分の思いや要求を叶えるためにどのように行動したらいいかを考え、他者と直接やりとりをする事で、思いや願いが叶っても叶わなくても納得し、自ら行動する力が生まれるのだと感じました。これからも彼の思いを受け止め、共に考え、悩み、一緒に解決策を探っていきたいと思っています。
※写真はイメージです。

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