信頼できるかどうか私が試された時
会報「第39号 共に生きる」より(平成26年3月発行)
 Qさん(29歳)はダウン症の男性です。言葉は少なく「べんとう」や「てーぷ」などの単語で外出したいことや音楽を聴きたいことを伝えてくれます。また、意思表現の一つの手段として服を脱いだり、排泄の失敗をすることも多々ありました。

 私が担当になってすぐの頃、昼食時にいきなり自傷したことがありました。私には彼がなぜ自傷したのかわかりませんでした。すると、Qさんと馴染みのあるR職員がその場に来て「おかわりしたかったんでしょ?お皿を渡したらちゃんと持ってきてくれるよ」とQさんの気持ちを私にもわかるように話してくれました。QさんはR職員のことをとても頼りにしており、私もその職員を頼りに少しずつ関係を築いていこうと努力していました。

 Qさんは職員が押す車椅子に乗って帰宅するのですが数か月経っても私とは帰りたがらず、R職員や前担当と帰りたいと主張する日が続いていました。言葉で「お前とは帰りたくない」とは言わず、車椅子を押そうとする私の手を払いのけ、R職員や前担当の手を取り車椅子を押させるのでした。“数か月ずっと一緒に過ごしても拒否されている”とショックを受ける毎日で、正直とてもしんどかったです。しかし、いつか私と帰りたいと思ってくれるようにQさんと過ごす時は好きなことを一緒に楽しもうと思っていました。Qさんは音楽が好きで歌うと身体を揺らして聴いています。歌を歌っている時はとても楽しそうで私もうれしく思えました。

 ある日、降園時に立ち上がったQさんがある物を手に取り私に渡してきました。それは私がいつも背負っている鞄でした。私はびっくりして「え、一緒に帰っていいの?」と聞きましたがあまり反応はありませんでした。しかし私が車椅子を押しても嫌がることなく家に帰ることができました。しんどかった数か月が実った瞬間でした。

 今思うと、あの数か月はQさんが私を採用しようかどうかという見極め期間だったのではないかと思います。私がR職員を頼りにQさんのことを理解しようとしていたように、Qさんも私のことを「この人はどんな人なんだろう」「どこまで付き合ってくれるんだろう」と理解しようとしていたのではないかと思います。

 今でもQさんの思っていることがまだまだわからないことも多く困ってしまうこともありますが、お互いに少しずつ理解していけたらと、気持ちに余裕を持って日々関わっています。
※写真はイメージです。

エピソードページに戻る  トップページに戻る