すうじのうたがしたい!
会報「第38号 共に生きる」より(平成25年8月発行)
 平成24年の4月に淡路こども園に入園したPちゃん。入園当時は視線も合いにくく、発声もほとんどなかった。私も働き始めたばかりの頃で、Pちゃんのしたいことや言いたいことがなかなか分かってあげられないことが多かった。Pちゃんも伝わらないもどかしさや分かってくれないという諦め等いろんなことが積み重なって、その度に泣きながらしんどくなるPちゃん、私自身も申し訳ない気持ちになっていた。

 今年の4月のある朝、おあつまり(朝の会みたいなもの)で私はピアノを弾きながら歌を歌っていると、いつもなら好きな曲をリクエストしてくれるPちゃんが不満そうな表情で遠くの方から見ている。「どうしたんだろう?」と気にはかけていたが、ピアノを弾いていることもあり、そのまま続けていた。おあつまりが終わって午前の活動になっても、表情は変わらない。それどころか目に涙を溜めてこらえている。「何がイヤだったんだろうか?」と考えても思いあたらず、私自身もモヤモヤしていた。Pちゃんから話を聞いてみようと思い、Pちゃんを抱っこして、活動の場を離れた。いつもなら抱っこ等のスキンシップを喜んでくれるが、喜ぶどころか視線も合わせてくれない。私がPちゃんの顔を見ながら「Pちゃん、何か怒ってる?どうしたん?」と聞くと「オー」と声をあげながら、私の身体を叩いて怒りを表現した。しばらくするとPちゃんから「す‥じ」と言葉で伝えてくれようとしている。「何だろう?」と私も必死で考えた。もしかして…と思い「すうじのうた?」と聞くとPちゃんも「それ!」というように「オー」と声をあげた。「じゃあ、今からしよっか」と誘うと、Pちゃんからピアノの方に移動してペープサートを準備している姿を見てハッとした。実はおあつまりをする前にすうじのうたのペープサートが何枚か出ていたのだ。「あれはPちゃんが用意したものだったんだ」とやっと気付くことができた。

 今までのPちゃんだったら、きっとペープサートを出しても、気づいてもらえなかったら諦めて、場を離れていたであろう。もう少し早く気付いてあげられたらよかったと私自身反省も残るが、Pちゃんがしたいことを最後まで諦めずに「わかってほしい」と伝えてくれたことが何よりうれしく思った。
※写真はイメージです。

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