音楽活動の目ざすもの
(2023年5月・第542号「風の子だより」より)

 今から30年ほど前になることですが、日本の保育施設の関係者10数人の人たちと共に、ヨーロッパの保育施設の見学に参加したことがありました。

 それは確かデンマークの保育施設に伺った時でした。見学の日程が終わった後に、現地の人たちからちょっとした歓迎の催しがありました。その中である音楽が流れ、そのリズムに合わせ一緒に踊ることを誘われました。

 ところが、日本から参加した人たちは誰一人、尻込みして踊りに参加できませんでした。先方の人たちは苦笑して地元の人たちだけで踊りを披露したのでした。

 日本から参加した人たちは、だれしも恥ずかしさを感じたことと思います。これは日本の永年にわたる音楽教育の誤りがあったからの現象といえます。小中学校で「音楽」の時間と言えば、気を付けして声をそろえて歌を唄うという思い出しかありません。身体でもって音楽に親しむという体験がほとんどなくて大人になった日本の人たちです。

 しかし音楽の本質は、歌詞やメロディーではなく、リズムが基本です。ヨーロッパの人たちは、それが小さいときから自然に培われているのです。音楽はリズムですので、体はリズムに反応するように訓練ができているといえます。

 こんな私的な体験から、風の子保育園の保育に音楽活動の専門家に講師として参加いただき、日常の活動の中に取り入れてきました。永年指導いただき、昨年3月に関東へ転宅された講師がそうですし、また昨年4月より活動していただいているリトミックの講師も同じ目的で音楽活動をしていただいています。

 最近のテレビで若い人たちが音楽を全身で表現している姿を見て、日本も変わりつつあるように思います。風の子保育園の子どもたちが大きくなったら、ヨーロッパの人たちに負けない身体のリズムを発揮することになるでしょう。

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