子どもの自立を育てる保育
(2022年1月・第527号「風の子だより」より)

 就学前の子どもの保育の原点は、ドイツのフレーベルが1800年代に創立した「キンダーガーデン」という幼児の施設でした。この施設の保育は徹底的に「自由保育」でした。この施設の活動が、またたく間にヨーロッパ全域に広がりましたので、子ども自身を主体とする保育が当たり前の幼児保育の姿になりました。

 この幼児保育の考え方を日本に伝えた人は、当時の東京大学で心理学を学んだ倉橋惣三という学者で、「新保育」として理論化し発表しました。明治時代の当時、この子どもの自己充実を目的とする保育は大変な反響を呼び日本全体に広がりました。

 この保育方法は昭和の始めまで続きますが、だんだんと軍国主義の時代に入り、子ども中心とする自由保育が除けられました。保育者(教師)中心の上から下への「一斉保育」が、学校と同じように就学前保育の基本になり、今日まで日本の多くの保育所、幼稚園の実態となっています。

 よくある話に、子どもが「先生、おしっこに行っていいですか。」と手を挙げて意思を表します。その時、先生は「さっき、お休み時間になぜ行かなかったの?」と注意をします。これは小学校と同じように、時間割をつくって保育をしているからです。多くの幼児施設では、廊下の隅にトイレがあって、たくさんの便器が並んでいるのは、排泄も一斉に行なうためです。

 この「右向け右、左向け左」というのが、戦争遂行の「一億一心」の思想から生み出されたものです。風の子保育園の「たて割り保育」や「自由保育」の考え方は、当初日本の幼児保育の中で少数派でしたが、年々広がりをみせ、戦後七七年を経過して各地で実践されるようになりました。

 今年も年度の保育の終了が近づいてきました。子どもたちがどれだけ成長したのか、確認をしたい時期に入りました。3年続きのコロナのまん延で今年も計画どおり進まぬ年でしたが、最後まで努力したいと思います。

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