あの「やまゆり園」のその後
(2021年9月・第523号「風の子だより」より)

 2016(平成28)年7月に起きた、神奈川県での県立障がい者支援施設「津久井やまゆり園」での入所者四五人への殺傷事件から、五年がたちました。

 これは大事件でしたので多くの人たちの記憶に残っていることですが、この施設は建て直され同じ場所に定員66人で出発することになりました。元の施設は160人でしたので、40%程に規模を縮小したことになります。県は元のままで大規模施設で再建する予定でしたが、時代に合わないと反対運動が起き縮小することになったようです。そして、別の場所で同じ規模の施設を作る計画のようです。

 さて、このやまゆり園で殺傷された四五人のうち19人が殺害されました。事件を起こしたのは、この施設の指導員です。この事件から5年を経過し、この度施設の一角に慰霊碑が立てられ公開されたようです。しかし、この慰霊碑に亡くなった方19人のうち名前が刻まれたのは7人だけでした。なおフルネームで刻まれた方は2人だけで、後は氏を伏せて名だけの刻銘となったそうです。

 なんとも悲しい話です。死んでも人の眼から隠された扱いをされるとは、考えられない残酷さです。本人の名前を表示することに、保護者の同意が得られなかったからです。ここで「障がい」とは何かについて、改めて考えさせられます。

 私共が尊敬している岡村重夫先生(大阪市立大名誉教授、2001年死去)は、障がいは身体的なものではなく、精神的なものでもない。個人と環境との関係の障がいである。障がい者の生活の困難さは、社会的に差別されているところから起こっていると明言されていました。

 障がい者本人だけでなく、家族もまた隠れて小さくなって生きている社会こそ、何とか変えていかねばなりません。

 いま、小中高の学校の中で「いじめ」が広がっています。この「いじめ」もまた、安易に人を差別する行為です。普通の子どもたちが、どうして「いじめ」に参画するのか、「やまゆり園」の問題は根っこが広いことを指していると思います。

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