絵本に興味が持てる子に
(2021年4月・第519号「風の子だより」より)

 3月31日の毎日新聞に、高校の国語の教科書を来年度から大幅に中身を変えるという記事がありました。それは、文学的な文章ではなく、論理的思考を養成できるような内容に変更するというものです。

 これまで「読む」「書く」「考える」という国語教育の目的で、国語の文章から情緒的理解が進んでも、論理的思考がなかなか進まないと言う批判がされていたようで、国語の中身を変えるということのようです。

 昔から「頭の良い子」に育てたいと思ったら、小さい時から絵本を読むという習慣があると良いということが言われていました。絵本を通して、子どもたちはいろいろと想像をたくましく働かせます。例えば、お月様に兎が住んでいて、お餅つきをしているという描写があります。ここから子どもは頭の中で月の世界に対して幻想にふけるところから、感覚的な理解がすすみます。

 小さい子どもの頃は、感覚的、情緒的理解が先行し、それが頭の中を活発に働かせます。年齢が進むにつれて、物語の文章も筋のあるものに変わり、筋書きに興味が移っていきます。学齢前の子は絵本が主ですが、小学生になると「マンガ」に夢中になります。しかし、高学年になるとストーリーのある児童文学に興味が深まっていきます。中学、高校生になっていくと、文学書に関心がでてきます。

 こうして文字に対する関心は感性が刺激されることにより深められ、その中に論理的な思考が育てられるはずです。文字とは、すなわち本とは、そういうものではないでしょうか。いまの若者は、本もあまり読まないし、新聞も読みません。刺激や興味はテレビやネットから情報を得るだけですので、逆に論理的思考が鍛えられないのだと思います。理屈が先行する教科書からは、勉強嫌いの児童を増やすことにならないか心配です。高校生といえば、思春期の真っただ中にある訳で、色々と想像豊かにさせる文章に接することが大切のように思います。

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