保育所の入所基準
(2020年2月・第504号「風の子だより」より)

 保育所は、児童福祉法という法律の中に規定されています。したがって保育所は子どもの福祉施設であるという原則は、当初から明らかでありました。その子を保育所に入所させた方が良いという判断は、その子の置かれた状態からよく検討を加えた結果、判断するという長い歴史がありました。その判断は、市町村の福祉を扱う役所が行なってきました。しかし、その子のことや、家庭のことをよく知っている保育所の側の意見も、役所の方は求められて、役所の客観的な資料と共に総合的に入所の是非を決めていたということがこれまでありました。

 だが、こうした慣習は10年程前から皆無となりました。入所選定基準が根本的に変えられ、母親の就労状況とか、家庭や家族の状況とかが、すべて数値化されて点数の高い人から選ぶというようになりました。入所を希望している方の色々な事情や思いは、選考基準の問題ではなく、客観的な数値が決め手となります。その人に強いニーズがあっても、他に一点高い人があれば却下されます。

 何時の時代もそうですが、福祉はその人が生きていく上で困っていること、こうありたいと願っていることなど、その人の心の問題にまで含めて対応していく必要があります。そして、その人自身が自立して社会生活できるように援助していくものです。したがって、その人の持っている困難や悩みの福祉問題は、単純に数値化できるものではありません。

 当たり前のことですが、例えば入所希望の保育所(園)を選ぶ場合、家から近い、きょうだいと同じ所、前に上の子が行っていたのでよく知っている、園の保育が気に入っている、等々の理由があります。これは誰もが納得できる自然な望みと言えます。

 この極当たり前の希望は、単なる願望であって、数値化された客観的基準とは無関係です。保育所は、地域福祉施設から離れてしまったようで、大変残念に思います。

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