乳児の噛む問題について
2016年6月・第461号「風の子だより」より

 風の子保育園・風の子ベビーホームに、毎春いっせい入園する子どもたちは、おおむね0才か1才の子が殆んどです。初めて保育園に預けられた保護者の方にとって、1才から2才になるお子さんの成長の変化には、毎日、喜びと驚きの連続のことと思います。

 1才の半ばから自我の芽生えが始まり、すべてが自分のものという独占意識が強くなります。そして、自分の思うようにならないと強い癇癪を起こします。こんな時に、無理解の親が、子どもを強く叱る虐待のような行為を起こしてしまいます。でもこれは子どもの発達の自然な姿です。

 3才未満の時期は、お母さんと子どもとの関係が基本となって成長する時期です。この安定した母子関係が子どもの自我の発達をうながし、3才時期の反抗期、即ち精神的な母子分離へと結びついていきます。

 しかし、この母子関係を築く乳児期に、保育園に入所し大勢の子どもたちの中で集団保育の生活をします。ここに、前述の自己中心とする世界、いわば自我を築こうとする時期の子どもにとってはどうしても葛藤が起こります。おもちゃや場所の取り合い、担任の保育士の取り合い等々、友だちとのあつれきが日常にあります。こうした争いの時に、近くにいる相手に噛むという行為が起こります。

 相手の立場に立って、一歩引くとか、我慢するとかの社会性は、3才後半の用事になってから培われていくものですから、自らを守る「噛む」という行為は本能的なものといえるでしょう。争う相手のいない家庭だけで育つ子どもには、噛むという行為は殆ど生じません。集団保育の中での特徴といえます。前出の保育所関係者の悩みは歴史的なもので、解決されることはありません。乳児の保育場面で「噛む」という現象は、殆ど瞬間的に起こるので、防ぎようのないのが実際です。また、悩みの問題でもあります。

 この噛む問題について、どのように理解したらよいか、保護者の方と園職員とがよく話し合っていく必要があると思っています。

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