公立保育所の民間移管
2015年10月・第453号「風の子だより」より

 現在、大阪市の公立保育所は、基本的にすべて民営化する方向で民間への移管がすすんでいます。その形は、これまで大阪市の外郭団体のような事業団に運営を委託する方向で行われてきましたが、数年前に限界になり、保育所を運営する一般の社会福祉法人に委託されるようになっていました。

 しかし、これも受け入れる法人に限りがあることから、社会福祉法人でない、いわゆる民間企業、即ち株式会社をも対象とするようになりました。

 多くの女性が子育てをしながらでも働く時代になり、当然保育所を求める人たちが増え、都会では常に保育所入所の待機児童が深刻です。財政難の大阪市は、こうした時期に公立保育所を潰すわけにはいかないので、経費のかかる公立保育所から民間へ移行させたいのでしょう。数年前ですが、公立から民間へ移すだけで一ヵ所あたり年間5千万円の経費が削減できると言われていました。これは子どもに対する事業費は、公私とも同じですので、結局公務員の人件費の高さの故からでしょう。

 日本には、古くから官尊民卑の思想が根強くあり、昭和40〜50年代にかけて、公立保育所をポストの数ほど、「作れつくれ」という住民運動が盛んに行なわれました。こうして大阪市内で200程の公立保育所がつくられました。いま、それを支えることができなくなって、すべて民間に切りかえようとしているわけです。

 しかし、保育所は児童福祉法に規定された児童福祉施設です。したがって福祉の理念をもって、子どもの健全育成に努めるべき施設です。こうした保育事業は、あくまで公益的な事業ですので、この中から利潤を生み出すことは、到底考えられません。利益を追求することが目的の株式会社の経営する保育所とは、一体どのようなことになるのか、この矛盾関係をどのように理解したらよいのでしょう。

 老人ホームなどの高令者施設、障がい児のデイサービス事業も民間企業が多く参入しています。このように、いま福祉施設の世界は激しく変貌をとげようとしていますが、いずれ反省され、原点にもどる時が来るように思います。  

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設置・運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会