タテ割保育
2013年11月・第430号「風の子だより」より

 先日、保育園を卒園した子のお母さんにお逢いしました。「お子さんは、元気に学校へ行ってられますか。」と、お訊ねしたところ、「保育園時代のタテ割保育で育ったお蔭です。上の子とも、同級生の子とも上手に付き合って、学校が楽しくて仕方がないようです。」とのお話しがありました。

 保育園には毎年、将来保育士になろうとする学生さんが、学校からの依頼で大体2週間程度実習に来られます。年間を通すと20〜30人位の数になります。この実習生の人たちの半数位は、幼児のタテ割クラスを経験します。この人たちの実習後の感想文を読みますと、殆んどがタテ割保育については初めて経験したこと、上の子が下の子に対して良く世話をしたり、優しく振舞っていること、下の子は上の子を尊敬の念をもって接触して、色々と学んでいるのがすばらしい、というような共通の感想を読み取ることができます。

 今の学生さんは、小さい頃にタテ割保育で育った子は少ないわけですが、今日ではタテ割保育を実施している園が、随分と増えつつあります。高槻市の山手の方にある浦堂保育園は、数年前に保育を改革し、タテ割保育を実施しました。この園長さんは、タテ割保育を始めて以来、子どもたちがすっかり変りましたと述べられました。それは、子どもたち一人ひとりが、しっかりと自立してきたように感じられるというものでした。

 そもそもタテ割保育は、イタリアの有名な医師であり教育学者でもあるモンテッソーリー女史が提唱したものですが、それがヨーロッパ全体に広がり、欧米の幼児施設はほぼ100%タテ割保育になっています。

 それは大人の社会では、性別、年令、民族、文化など、すべてを超えて交じわった社会で生きています。子どもの社会でも年令をそろえる集団を作るのではなく、大人の社会と同じように異年令の子が交わっての生活社会が必要だという考え方からきています。

 義務教育の小中学生は、生活年令の差が学力と関係しますので学年別で組織されますが、保育園は生活の場ですので、兄弟姉妹のような関係での集団が意味のあることだと言えましょう。

園長手記ページに戻る  トップページに戻る
設置・運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会