視点

視点(6)
「理解」と「納得」、どちらも大切です

 人間のこころには「知・情・意」という3 つの側面があります。知(知的側面)は、物や出来事の意味や関係を理解する働きで、情(感情・情緒)は快・不快、安心・不安、満足・不満足といったこころの動き、そして意(意思)はその人の行動の方向を決める重要な部分です。これら3つの側面は互いに影響し合っています。今回は、感情や意思への配慮の大切さをお話ししたいと思います。

 生活の中で大人から何か課題を与えられたとき、どのようにすればよいかを理解できなければ、子どもは戸惑います。不安定になりかんしゃくを起こすこともあります。そんな場合は、まず、その課題自体が今の子どもにとってどんな意味があるかを見直す必要があります。そのうえで、ひとりひとりの知的能力に応じて、理解を助ける配慮がいります。たとえば、言葉だけでなく実物や写真を見せる、具体的な手順や手本を示す、一緒にする、できない部分を手助けする、励ます、褒めるなどが役立つでしょう。

 その際、理解面に対してだけでなく、同時に本人の意思や感情への配慮が不可欠です。分かりやすさ、しやすさが「したい」「しよう」という本人の意欲や意思に裏打ちされていれば、子どもの心の中には「できて良かった」「もっとしてみたい」といった達成感や自発性がしっかり育ちます。

 しかし、大人の求める課題がいつも子どもの意思や興味に合うとはかぎりません。たとえ課題が理解できても、「イヤ」「したくない」という気持ちになるときや、子どもにとって興味や必要性を感じられないときもあります。そんなとき、本人が納得できない状態のまま課題の実行を求め続けると、次第に「しなければならない」という気持ちが強まり、結果、欲求や感情を過度に抑制してしまい、自分の意思で決められない「過剰適応」に陥るおそれがあります。その後、学齢期や成人期になって、それまで身につけたと見えていた能力が生活の中で活かされないばかりか、「嫌なのにしないと気がすまない」「しんどくてもやめられない」など、日常生活を困難にするこだわりになることもあります。

 子どもの成長を長い目で見たとき、そのような事態に陥らずに、子どもが自信を持っていきいきと生活していけるようになるには、日常のかかわりにおいて、理解面への配慮だけでなく、感情や意思にもしっかり目を向け、納得して行動できるような配慮をこころがけ、バランスの取れた人格形成をめざすことが非常に大切だと思います。

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