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視点(41)
家庭の育児力を高めましょう

 発達がゆっくりなお子さん、障がいのあるお子さんを育てておられるご家族は、成長過程に応じて親の判断や決断を求められるときが多々あります。例えば、診断・判定の受け止め、治療・訓練・療育の場の確保、幼稚園・保育所・小学校など進路の選択、地域で生じる諸問題の解決などです。子育ての中心は母親にあるとはいえ、母親一人の対処では必ずしも良い結果に繋がりません。そこには父親・祖父母など、家族の理解・協力が必要になります。しかし、それぞれの立場・性格・経験・物事の捉え方の違いから、どうしてもコミュニケーションにずれや誤解が生じます。日頃からお互いの意思疎通がどれだけできるかが要です。

 そこで、今回は父母の意思疎通のあり方に焦点を当て、どうすれば『家庭の育児力』(家庭として問題に対処する力)をつけられるかを考えたいと思います。

 日頃の子育てに関する思いを知るために、通園児の父母それぞれに、相手に対して「感謝していること」「要望したいこと」をお尋ねしました。以下はそのアンケート結果の要約です。

◆母親の、父親に対する思い
<感謝> 仕事で疲れているのに、必要な時や母親の体調が悪い時に子ども(たち)の世話や家事をしてくれる。母親を気遣い自由に過ごせる時間を作ってくれる。話を聞いてくれる。一緒に考えてくれるので安心。病院に同行してくれるので助かる。子どもが父親になつくので嬉しい。
<要望> もっと子どもの相手をしてほしい。家事を手伝ってほしい。(黙って)私の話を聞いてほしい。他の家庭のように父親懇親会や家族行事に積極的に参加してほしい。
◆父親の、母親に対する思い
<感謝> 仕事で帰宅が遅くなるが、その間子どもの世話をしてくれている。育児は大変だが愚痴も言わずによくやってくれている。頭が下がる。子どもの様子を毎日報告してくれるので楽しみ。
<要望> 感情的にならずゆとりを持って子どもに接してほしい。急に怒り出すので戸惑う。手伝ってほしいことは具体的に伝えてほしい。自分にも相談してほしい。身体を大事にしてほしい。
 これらの資料をもとに、父母各々がグループで話し合いました。「他の父母の考えが聞けて良かった」「悩んでいるのは自分だけでないと分かり安心した」との感想が多く、「そんなふうに夫(妻)が気遣い感謝してくれているとは思わなかった」「普段から話す機会を持とうとしていなかった」と、気づきの声も挙がりました。互いに<感謝><要望>があっても、その思いを自分の心の中に留めたまま、相手に伝えていない場合が多いことが分かりました。

 互いにお子さんの成長を願い、また相手のことを気遣っていても、それを率直に伝えることは苦手のようです。その結果、困った問題に直面すると、母親は父親に相談することなく、ひとり悩みを抱えたまま、自分だけで対処してしまいます。一方、父親は母親の心境に気づかず、あるいは「相談もなしに勝手に決めた」と母親に不満を持つことになります。こうした実情と問題点を確認し、改善に向けての手立てを一緒に考えるなか、「ひとりで頑張りすぎず、父親に相談してみます」「相手に伝わるやり方を考えてみます」など、前向きな発言が聞かれました。

 …知恵を寄せれば解決の道が見えてきます。時間をかけて『家庭の育児力』を培いましょう。

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