視点

視点(37)
ピンチをチャンスに…個別相談を活用しましょう

 子育てに悩みはつきもの。些細なことから深刻な問題まで様々です。時には解決が難しい(と思われる)問題が生じる場合もあります。そんなとき、一緒に考えてくれる人がいると、解決の糸口が見つかることはよくあります。今回は、二つの事例を通して、個別相談の意味を考えます。

◆K君(3歳)のお母さんから、「息子がこの頃ちょっとしたことでぐずるようになり心配」との相談がありました。話を伺う中で、数日前の買い物の話題が出ました。急いでいたお母さんは、K君に泣かれると困るので、祖母に頼んで黙って家を出たそうです。K君はその後すぐに家の中でウロウロしはじめたとのこと。母親の急な不在が「今度はいついなくなるか…」との不安を引き起こし、今回のぐずりに繋がったのではないかと思われました。

 そこで、私たちは、「出かける時は『行ってきます』と伝えた方がよい。K君がなついている祖母がいるので、最初は泣いても母親が約束通り戻ることが分かれば、納得するようになるはず」と見通しを伝えました。加えて、大きな不安を与えたことについてK君にきちんと謝ることを勧めました。お母さんは「かえって分離が難しくなるのでは」と迷われましたが、最後は「ちゃんと伝え、不安をしっかり受け止める」分離を決意されました。以降、そのやり方を一貫して重ねた結果、K君は母親の言葉に耳を傾け、自分からバイバイするようになりました。もちろん、ぐずることはなくなりました。

◆H君が小学校2年生の3学期、母親から、「帰宅するとハサミで自分の服を切ってしまうんです。注意しても聞きません。ハサミの使い方が分からないのでしょうか」との訴え。H君の発達状況から見ると、「理解力の不足ではなく、別の理由があるはず。切る行為は怒りやいらだちの反映かもしれない」と推測し、学校・家の様子を詳しくお聞きしました。その中で、今度就学を迎える妹と父母が「ランドセルはどこで買おうか?」「学習机はどうする?」と話し込んでいたこと、少し離れたところにいたH君が聞いていた可能性があることが分かりました。H君は入学時から学習机を持っていなかったうえ、自分抜きで父母・妹がその話をしていたことが納得できなかったのではないかと思われました。

 H君のふるまいとその時の状況を照らし合わせて「そうかもしれない」と感じたご両親は、蚊帳の外においてしまったことをH君に謝りました。そして本心を尋ねた所、H君は「机、ほしい」とほっとした表情で答えたそうです。さっそく願いを叶えてもらい気が済んだH君は、ハサミで服を切ることは全くしなくなりました。

 このように、個別相談では、生活全体を視野に入れて困った行動や気になる行動の背景を探ります。保護者と支援者が一緒に考える共同作業を通して、何気ない話の中に問題解決のヒントを見つけたり、「え、こんなことが関係しているの?!」というような保護者自身が自覚できにくい事象間の関係を探し当てたりします。その結果現実に見合った対応や支援ができれば、子どもは確実に落ち着き、保護者も本当の安心感を得ることができます。

 知恵を合わせた個別相談はピンチをチャンスに変えます。是非ご活用ください。

視点ページに戻る

トップページに戻る
運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会