視点

視点(36)
子育てを応援する、おじいさん・おばあさんへ

 若いお父さん・お母さんにとって、子育てははじめての経験です。特に発達上配慮が必要なお子さんの子育ては、様々な困難を抱えやすいため、周りの人の理解や支援が重要です。今回は、人生の先輩、子育ての経験者である祖父母の応援が父母(特にお母さん)やお孫さんに良い形で届くための手立てについて考えます。

 あるお母さんの例です。風邪をひいて体調を壊してしまい、実家に助けを求めました。「熱が出てしんどい。子どもを見てもらえないだろうか」と依頼した所、祖母からは「それくらいの熱で弱音を吐いたらあかん。私はあなたを育てるときにどれだけ頑張ったか」と思わぬ厳しい返事が返ってきました。祖母なりの励ましだったようですが、母親は「私はそこまで頑張れない。もう頼まない」と、かえってかたくなになってしまいました。

 ある方は、祖母から援助は得られるものの、「何でちゃんと片づけができないの」と何度も指摘されたり、母親には受け入れにくい祖母流のやり方で片づけや洗濯をされたりするので、いつも最後は喧嘩になってしまうとのこと。また、「言葉は出たの?」「訓練しなくていいの?」「早く集団に入れたら」と祖母なりの心配や疑問を次々にぶつけてくるので、「精一杯やっているのに」と反発してしまうお母さんもいます。その他、食事・おやつの与え方、排泄といった躾や育児の仕方の違いから摩擦が生じる場合も多々あります。どんな改善策があるでしょうか。

 お母さん方の多くは、「しんどい気持ちはそのまま受け止めてほしい」「”頑張れ”でなく、話を聞いてほしい」「家事は聞きながらしてほしい」と言われます。しかし、中には「やり方は違っても、してもらうだけで助かる」と割り切って任せている方もおられます。もちろん、実家の援助・配慮が無理なくお母さんの安心感・意欲に繋がっている場合もあります。応援の仕方には「こうでなければ」というマニュアルはないので、各家庭で、大人同士が率直に話し合って「これで行こう!」という線が出ることが大切だと思います。

 祖父母は子育ての経験を持っておられるだけに、お孫さんにはゆとりを持って接することができます。ところが、娘さんである母親に対しては、親子であるだけに、「しっかりしてほしい」とつい力が入ります。あるいは気を遣うあまり過度の我慢になってしまいます。

 大事なことは、育児の最前線にいるお母さんが穏やかな気持ちで自信を持って子育てできることです。それには、例えば、①お母さんの不安や訴えにじっくり耳を傾ける、②ご自身が頑張った経験だけでなく、悩んだこと・迷ったこと・うれしかったことも伝える、③どんな手伝い方が良いかを話し合う、のはどうでしょうか。一緒に考えてくれる人生の先輩がいれば、お母さん方の育児不安や負担感は確実に軽減します。「みんな同じように苦労したんだ」と分かれば、肩の荷がおりて新たな意欲が湧いてくるにちがいありません。

 お母さんへの応援は、お孫さんのすこやかな成長を支える鍵でもあると言えるでしょう。

視点ページに戻る

トップページに戻る
運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会