視点

視点(31)
子どもの心を発見するよろこび

 発達支援を必要としているお子さん(幼児期~学齢期)のお母さん、お父さんとお会いする中で、私たち支援者が心を動かされるお話がたくさんあります。今回は、まだ言葉でうまく自分を表現できないお子さんと関わる中で、それまでつかみにくかったお子さんの意思・心を発見したときの保護者の方々の声を紹介させていただきます。
・園に通う以前は、喋らないわが子に意思があるとは全く思っていませんでした。それで、職員の方々が、返事もできない子どもたちに「丁寧に話しかける、説明する、意思を尋ねる、気持ちを代弁する、謝る、慰める」などの姿を見たときは、違和感を持ちました。正直、「そんなんでこの子たちに通じるのかな?」と疑問に思いました。でも私自身、わが子にちゃんと話しかけていると段々目を見てくれるようになり、かんしゃくを起こしても「○○が嫌だったの」「○○したかったの」と慰めると落ち着くようになりました。今は「この子はちゃんと話を聞いている。通じるんだ!」と自信を持って言えます。

・以前は、たとえば、トイレ等で子どもと離れる時には何も言わずに行っていました(そう言えば、気がつくとドアの前でよく泣いていました)。また買い物等で外出する時は、家族に留守番を頼んで本人に見つからないようにそっと出かけていました。助言をもらってちゃんと行先を伝えるようにすると、分離時に泣いたりぐずったりすることがだんだん減り、しっかり顔を見てバイバイしてくれるようになりました。今では、再会するとニコッと抱きついてきます。ちゃんと伝えて慰めれば、納得するんですね。

・夫婦で仲良く話をしていると、仲間に入れてほしいのでしょう、私たちの間に割り込んできます。雰囲気によっては喧嘩と勘違いしてしまい、私たち2人の手をとり“繋いで”と要求します。子どもなりに私たちのことを気にかけていて、話もよく聞いています。

・私が風邪で寝込んでいると、コップを持ってきてジュースを何度も要求しました。「こんな時に、しんどいなぁ」と思いつつも応じてあげると、それを私の口元に差し出しました。自分が飲みたかったのではなく、母親の私のことを気遣ってくれたのです!

・これまで私は「本人のため」と思い、嫌がっても繰り返し教えてきました。でも、わが子が中学生になった今、過去を振り返って見ると、親が躍起に取り組んだことはほとんど身につきませんでした。「もういいわ」と本人に任せるようにしたら、「○○はイヤ!」「これする!」と主張しはじめました。言われたことはちっとも長続きしなかったのに、自分から始めた絵日記は今でも根気強く続けています。最初の頃は意思を聞いても「分からん」と答えるだけでしたが、やっぱり本人なりの意思がちゃんとあったんですね。

 日々の関わりから得られたこれらのエピソードは、「子どもには意思がある」ことを私たちに教えてくれます。私たちは、そこから一人ひとりの子どもの主体性をしっかり感じ取り、保護者と共に、自分を表現する力、やりとりする力をはぐくみたいと思います。

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