視点

視点(29)
人見知りの強い子

 知らない人に出会うと緊張して母親に抱っこを求める子、初めての場所に行くと母親から離れない子がいます。いわゆる『人見知り』の強いお子さんです。今回は、『人見知り』の意味と、そのようなお子さんへの支援のあり方を考えます。

 まず出発点として、『人見知り』をどのように捉えるかが要です。相談にお見えになるお母さんの中には、「大人に頼ってばかりでは人間関係が広がらないのではないか」「友だちと遊べるようにならないのではないか」と心配されて、しがみつくわが子を何とか離そうとされる方がいます。(残念なことに)専門職の中にさえ、「親と一緒にいると社会性が身につかない。早く集団に入れた方が良い」と勧める人がいます。それを聞くと、はじめての子育てで不安を持つお母さんは、「早く慣れさせなければ」と、物おじする子をあえて人の多い場所に連れ出したり、「どうかな?」と疑問に思いつつも、分離を嫌がる子を幼稚園や保育所のスタッフに託したりします。しかし、結果は必ずしも期待通りになりません。新しい環境になじまず、かえってしがみつきが強くなる子もいます。「気の弱い子」「自立できない子」と性格や障がいの問題と捉えられてしまうケースも少なくありません。

 子どもの発達から見ると、『人見知り』は「克服する」ものではなく、健やかに成長していく過程で見られる大切な行動です。それは、その子が自分にとって大事な人をしっかり選んでいること、周りの人の態度や人間関係をよく見ていることを示唆しています。ですから、『人見知り』を否定的に捉えて母親から強引に引き離すのではなく、本人が安心・納得できる態度やかかわりを心がけることが一番大切です。母子分離不安を受け止めてもらい、本人の意思を尊重してもらう経験を重ねていけば、子どもの心の中には必ず安心感・人への信頼感・物事に対する意欲がはぐくまれていきます。

 一方、はじめての育児で(不安や心配があって当たり前なのですが…)、周りの人から「過保護にしている」と批判的に言われたりすると、お母さんは「子どもが離れないのは、自分の育児がまずいのかな」とご自身を責めがちです。しかし、そのように考える必要はなく、お子さんにとって「頼れる存在」になっていることに自信を持つべきだと思います。心の支えは、どんな人にとっても前向きな気持ちを持って生きていく土台となります。

 自信を持って生活されている成人の中には、小さい頃に「親によく甘えた」「人見知りが強かった」という方々が沢山おられます。「泣き虫」がたくましい青年に育った例もよく聞きます。性格は経験や人との出会いによって作られていきます。そういう意味で、私たちは、日々の子どもとの関わりを大切にして、長い目でその成長を見守りたいと思います。

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