視点

視点(27)
分かりにくい行動からストレートな表現へ

 今回は、子どもが日常生活の中で分かりにくい行動をする場合、よりストレートな表現ができるように私たち大人ができることを考えてみたいと思います。

 お母さん方とグループの話し合いをしていると、お母さんを探して子どもがよく部屋に入ってきます。そのとき、母親の姿を認めていても、部屋の中をグルグル回る、他のお母さん方の身体に次々に触れる、テーブルの下にもぐりこむなど、分かりにくい行動をする場合があります。なぜ真っすぐ母親の所に行かないのでしょうか。それには訳があります。子どもの表情・視線とお母さんの態度、その場の雰囲気をよく観察してみましょう。

 お母さんは、子どもが真っすぐ自分の所に来れば、声をかける、微笑む、抱っこをするなど、自然に受け止めておられます。しかし、直接来ない場合は、わが子の様子を気にかけながらも、たいがいは何も言わずにそのまま話を続けられます。ご自分も話がしたいし、話を中断することで他のお母さん方に迷惑をかけてはいけないと気遣われるからでしょう。そのうち子どもの行動はエスカレートしていき、テーブルに登ってピョンピョン跳んだり、窓柵によじ登ろうとしたりします。さあここまでくるとお母さんも黙っていられません。席を立ってその行動を止めようとします。しかし、「お母さんの所に行きたい。でも話をしているので行きづらい」という本心を理解してもらえないので、子どもは身を引いて抵抗します。最終的にお母さんは途方にくれてしまい、言うことを聞かないわが子に腹を立てる結果になります。

 部屋に入ってきたことに気づいたら、話を中断してもよいので、まず顔を子どもの方に向けて、「お母さんはここよ」というメッセージを送ってください。それで来なければ、今度は身体を真っすぐお子さんに向けて、「ここよ!」とより明確なメッセージを発信してください。両手を差し出して「おいで!」とジェスチャーで示せばもっと伝わるかもしれません。同時に、他のお母さん方にも協力を求め、「お母さんはそこよ」と伝えていただきました。・・・予想通り、最初ウロウロしていた子も、真っすぐお母さんに行くようになりました。親子とも晴れやかな笑顔です。・・・子どもは、私たちがその子を見ているのと同じように、私たちの表情・態度を見て行動しています。この例は、お母さんの態度の変化が子どもに安心感を与え、そのストレートな表現を引き出したことを教えてくれます。

 誰でも「優しいまなざしで声かけをしてくれる人」には親しみを感じ、思いを率直に伝えやすいものです。行動だけを見て、「変な行動をする」と決めつけずに、私たち自身の態度やコミュニケーション力を見直し、できることから実行していきたいと思います。

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