視点

視点(25)
本人、友だち、集団

 障がいがあっても発達がゆっくりであっても、「周りの人から理解され、認められ、元気に育ってほしい」「友だちと仲良くなってほしい」というのは、みんなの願いです。そこで、「子ども同士で遊ばせなくては」「早く幼稚園や保育所に通わせなくては」と焦る人はたくさんいます。今回は、友だち関係の育ちについて考えてみましょう。

 「幼稚園・保育所に入れれば他の子どもから刺激を受けて元気に遊べるようになる。言葉が喋れるようになる」というのは、かなり乱暴な考え方です。もちろん、集団生活を通して、元気になる子もたくさんいますが、逆に対人緊張が強くなり人との関わりが苦痛になってしまうお子さんもいます。その違いはどこから出てくるのでしょうか。

 それを解明するには、①一人ひとりの子どもの状況、②保育者の力量、③集団の質、に目を向け、その子が周りの友だちをどのように捉えているか、友だちからの働きかけをどのように受け止めているかを見る視点が必要になります。

 まず、①友だちに興味を持ち自分から積極的に関わりを求めやりとりを楽しんでいる場合は、それほど心配されないと思いますが、集団生活は楽しいことばかりではありません。おもちゃを取られる、世話を焼かれる、行動を止められる、注意されるなど、本人が「困ること」も出てきます。そんなときに、我慢ばかりにならず、「イヤ」「待って」「○○したいねん」と主張したり、難しいときには保育者を求めてそこで気持ちを落ち着けることができるかどうかを見ておきましょう。必要なときに主張する力や大人を求める力が育ってくれば、少々の困難は苦にならず、集団生活は楽しいものになっていくはずです。

 次に、②保育者が、子どもの意思や気持ち、不安や戸惑いを汲み取り対応できるかどうかも重要な指標です。子どもの興味や思いに共感し「困り感」に気づく感性を備えた保育者は、子どもにとって大切な「心の支え」になります。しかし、行事や一斉活動に追われたり、課題達成を強く求める保育になったりしている場合は、保育者は「行事をこなす」「子どもにさせる」ことにエネルギーを使わざるをえません。その結果、子どもとじっくり向き合う時間が持てず、最も大切な人間関係を築くことが難しくなってしまいます。

 最後に、③周りの子どもたちの状況です。どの子も発達途上にあり、「自分を見てほしい」「聞いてほしい」「認めてほしい」という気持ちを持っています。日々の保育で一人ひとりが大切にされていれば、配慮のいる子を仲間として受け入れる余裕が生まれます。反面、規則や保育の枠組みが強く我慢を強いられていると、相手への思いやりは育ちません。

 以上のように、友だち関係は集団に入れさえすれば育つものではなく、集団の質も影響します。生活の場はどこであれ、基本は気持ちの通い合う人間関係をいかに築くかです。

 ここ児童発達支援センターでも、幼稚園、保育所でも、(また家庭でも!)目の前にいる子どもとしっかり向き合い、安心感と自信のもてる人間関係形成が求められています。

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