視点

視点(24)
見直したい言葉・表現

 子どもの姿や行動を表現する言葉の中には、①子ども本人、②保護者、③支援者、④専門職、⑤一般市民、各々の立場から見たとき、不適切と思われる言葉・表現があります。今回は、そのような言葉・表現を見直す必要性について考えます。

代表的な例をいくつか挙げると、
・分からせる、言わせる、参加させる、歩かせる、自分でさせる …関わりや働きかけ
・しつこい、うるさい、調子に乗る、わざとする、わがまま etc …行動・性格など
・オーム返し、クレーン現象、など …専門用語
 これらに共通しているのは、子どもを、大人から見て厄介な存在、あるいは、訓練・しつけ・治療の対象と見ている点です。例えば、「オーム返し」は、「音声を(反射的に)まねているだけで、意味が分かっていない」、「クレーン現象」は「目を見ずに手を引っぱっている。人を単なる道具として使っている」という否定的なニュアンスを含んでいます。

 いずれも、子どもに対して失礼で誤解を生じる表現です。子どもはオームではありません。自分なりの能力を精一杯使って、場の雰囲気を感じ取り(ある程度意味を理解して)自発的にまねています。また、まっすぐ視線を合わせなくても周りの人を意識しています。人の手を探して懸命に要求や思いを伝えようとしています(よく観察すれば、背を向けていても話を聞いているなど、むしろ相手を意識しすぎていることもあるくらいです!)。

 大人が「○○させる」と表現する背景には「自発的にはしない・できない。だから、指導・訓練が必要」という捉え方があり、それは「しっかり目を見させる。手を引くのでなく、ちゃんと指さしや言葉で言わせる」という指示的対応・指導に繋がりやすいので、注意が必要です。そうした関わりによって、「指示がないと行動しない」という受動的な態度を身につけてしまったり、自然な感情の育ちが妨げられる場合があります。

 私たちは、「どの子も意思、感情を持っている。それを理解し表現できるように援助するのが支援の大原則」と捉え、そこを出発点として、本人の主体性をはぐくむことを何より大切にしたいと考えています。「○○させる」は、「本人が自発的に、納得して、意欲的に○○できるように支援する」という表現に変えるべきではないでしょうか。
例えば、・分からせる→ 本人が分かるように支援する、というように。
・参加させる→ 自分から参加できるように支援する、というように。
・歩かせる → 自分の意思で歩けるように支援する、というように。
 みなさんも、お子さんの立場に立って、身近な言葉・表現を見直してみてください。

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