視点

視点(16)
子どもは精一杯表現しています

 自分の考えや思いを言葉でうまく伝えられないお子さんの場合、私たちにはその表情、行動、興味の背景にある意味を読み取る力が求められます。その子なりに精一杯自分を表現していることを知っておきたいと思います。

 今回は、「同じ店に入らないと気がすまない」「特定の歌にこだわる」と言われるお子さんの例を挙げて、考えてみましょう。

 その子は小学生で、好きな職員が他のお子さんと遊んでいると、寄っていくことができません。職員に声をかけてほしいのですが、必ずしも期待通りになりません。また家でも、大好きなお母さんの体調がすぐれない、宿題をしないお兄ちゃんについ口やかましくなる、夫婦喧嘩になるなど、その子にとって気になる出来事がいろいろ起こります。そうすると、必ずと言っていいほど、園の行き帰りに途中にある店に入って動かなくなります。

 言葉で伝えてくれないので正確なことは分かりませんが、どんな心境なのでしょうか?・・・ヒントは、そのお店の素敵なPR の歌にあります。その歌詞はこうです。

 「♪まごころとほほえみをかきまぜてジュースにしたのが、すなわち愛でして・・・触れ合うハートを重ねたら、それが愛、愛♪」となっています。このお子さんは何度もその歌詞を必死で歌うのです。園では、「♪ごめんね、素直じゃなくって、夢の中なら言える♪」というセーラームーンの主題化を歌うこともありました。・・・どうでしょうか? この子はどんな思いを抱いているか、察しがつきますよね!

 職員とお母さんが横にいるだけではダメです。大人同士で園や家での出来事を振り返り、そのお子さんの我慢、不満、気がかりに思い至り、その場で「気づかなくてごめんね」「喧嘩が嫌だったのね」と謝ったり慰めたりしてはじめて、気持ちが治まるのです。その結果、ようやく「分かってくれたか」と言わんばかりにその場を動くのでした。

 普段、他のご家庭でも、「TV やVTR で同じ場面を繰り返し見ている」との訴えはよく聞きます。詳しく尋ねると、たいてい「おかあさんといっしょ」で親子が楽しんでいる場面、和気あいあいと家族が団欒している場面、あるいは、怪獣同士の戦い、ヒーローが窮地に陥る場面、主人公の子どもが叱られている場面だったりします。

 いずれも子どもたちの思いを反映している貴重なメッセージです。とすれば、簡単に「望ましくない行動」と決めつけず、嬉しい事、辛い事、困っている事を伝えようとする大切な行動と捉え、実生活において、「ほっとできる場」「安心できる人間関係」「理解してくれる人」が得られるようにする、そのことを子どもたちは切に望んでいるに違いありません。

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