施設長

重度障がいの人への意思決定支援の実際
(第7回日中活動支援部会施設長等研究会議・平成24年9月)

1.意思決定支援の前提として
@本人の主体的側面を重視した支援
利用者をかけがえのない命、魂を持った存在として認め、一個の主体として尊重する(主体的側面の尊重)
支援者中心ではなく、本人主体、本人中心の視点に立って支援を行う(本人中心の支援)
A意思決定支援と関係形成とは切り離して考えられない
一人の世界で意思決定をするわけではない(人は一人では生きられない)
社会の中、身近な人との関係性の中で本人は意思決定を行っている
身近な人たちの中で安心して暮らせるのか、身近な人たちが本人の思いを受けとめてくれるのか、ということが本人にとっては大切→周囲の人との関係を抜きにして意思決定の支援は考えられない。
B相互主体性
支援者自身もかけがえのない命を持った一個の主体であるからこそ利用者本人の思いを受け止めることができる;指導訓練における「指導者」の「主体性」とは異なる主体性。
支援者と利用者は互いに主体性を持った存在として尊重されるべきであり、対等な関係をベースに利用者の立場に立って意思決定の支援をすることによって、本人の思いを明確にすることができる。
C利用者のエンパワーメントにつながる
意思決定の支援によって、本人の思いが伝わり、本人が認められるようになることで、本人が自信を持ち、人との関係で安心した生活を送れるようになっていくことが、本人のエンパワーメントにつながる。
エンパワーメントの問題を抜きにして形だけ選択肢を作り、意思決定の支援をしても意味がなく、本人のためにならない。

2.意思決定支援のプロセス [資料1]
@意味の推測と確かめ
言葉で話ができない人も心の中に様々な「思い」を秘めている。
その思いが本人の多様な行動(表出、表現)になって現れる。
その行動の意味を推測して確かめていくことによって、本人の「思い」が明確になり、支援者の対応がしやすくなる。
対応することで問題が解決されることにより、本人の生活が安定し、そのプロセスを共にすることを通して、支援者への信頼が生まれる。
A自発的表現の促進
本人との間に形成された信頼関係をベースに、本人のコミュニケーションがうまくいくよう、本人の自発的表現を補足し、促進する。
本人は思いを持って、伝えようとしている、意思のある存在、このことが周囲に伝わることによって本人へのまなざしが変化する。
周囲と本人との関係が変化し、「役に立ちたい」「〜してあげたい」など本来本人が抱いていた気持ちが率直に伝わるようになり、認められる行動が増える(世話される存在から共に生きる存在へ)。
このことが本人の自信につながり、更なるコミュニケーションへの動機づけとなっていく。

3.行動の意味の推測と確かめについて [資料2]
@行動の意味の理解(利用者本人の世界を推測・イメージする)
主体的側面の重視→外に現れた行動だけで評価しない。
行動の背景にある本人の思いを推測し、確かめる。
共感と理解が必要
A事例 [資料3]

4.自発的表現の促進
@ 発語がほとんどない人もピアジェのいう表象期 (2歳以降、イメージを喚起できる時期、言葉の世界に入る時期)に入っていることは多い。言葉や写真、図形などから周囲の事柄に対してイメージを抱くことは可能(「リョコウ」→自分を置いて見んな出かけるんじゃないか。「タイヘン、シンドイ」→自分のことでイライラしてる、など)
A 本人との関係をベースにして、写真や図形、又本人とのかかわりで出来上がったカード等を用いて、本人の状況にあったコミュニケーションの補助を行い、自発的な表現を促進する。
B 事例

5.意思決定支援の難しさ
@本人の自己表現の難しさ
自己主張に慣れていないことから、極端な言い方になったり、思いが暴発して暴力になったりすることがある。
知的障がいの人が自身について持っているイメージは非常に悪い場合が多い。
これまでの、自分自身を尊重されてこなかった、差別され続けてきた歴史を考えると、初めからうまく自己表現ができることは難しい。ある程度の試行錯誤が許される必要がある。
言いたい点は理解してあげ、行きすぎな行動は注意を促し、徐々に相手のことを考えながら自己主張ができるように支援する。
A職員の資質
職員の状態が直接利用者に影響するが、支援者自身は気づいていないことが多い(機嫌のいい日、悪い日の利用者の反応)
こういった問題を率直に話し合え、職員間でフィードバックして修正できる関係を作っていくことが必要。
B職員集団としての支援
一職員ではなく、職員集団が一致して支援する必要がある。
本人が活動を拒否した場合、通園を拒否した場合、家から出ることを拒否した場合など、一つ一つの意思表現を本人の真摯な訴えとして捉え対応することが必要。→非常に難しい
例1→活動を拒否し、10年以上寝て暮らしている人(誘いかけ→悪だくみと捉える。親が認知症に。親の世話をするようになり、周囲の人との関係が変化。引っかかりが取れて活動するようになる)。
例2→5年くらい家から出られなかった人(背景に家族関係の難しさ。両親を支えながら関係調整。父母の協力関係ができてくるとともに登園できるようになる)。
表面の行動の裏に本人の本当の思いが見え隠れすることも多い。
体制の変更(枠組みを外す→支援者が自己都合で規制のための枠組みを作るのではなく、利用者のニーズをもとに枠組みを作っていく)も含めて、本人の意思決定を組織として尊重できるかどうかが非常に重要。

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